胃に穴をあけてまで食事を摂るなんて、胃ろうは自然の摂理に反した行為ではないか、延命処置ではないかと悩まれる方に読んでいただきたいお話です。
答えを見つけるのは本人さんや家族さんですが、その決断のヒントになればと思います。
とりあえずさくさくと進みましょう(雑)。
目次(クリックするとその項目に飛びます)
高齢の要介護者が胃ろうにするメリットとは
リハビリ次第では口から食べられるようになることもある
一番知ってほしいことはこれ。
もちろん本人の状況にもよりますし、胃ろうをするに至った経緯や病気にもよりますが
胃ろうをつくったからといって、二度と経口摂取ができないわけではありません。
普段は胃ろうから栄養を取っているけれども、プリンやゼリーをおやつとして口から食べることはできる人もいますし、言語聴覚士(ST)によるリハビリで、食事ができるようになった人もいます。
なかには、パーキンソン病が進行し、薬が効いている間にしか動けないので、まずは胃ろうから薬を注入し、薬が効いている間には一人で食事を取ることができる方もおられました。
特に、今は昔よりもリハビリの意識が高まっており
一回胃ろうになったからといって、経口摂取を完全に諦めるという風潮ではありません。
残念ながら、二度と口からの食事が難しい方ももちろんおられますが、それでもなめて味を楽しむ程度はできないかなど、リハビリで試行錯誤することが多いです。
ちなみに私がこの間認定調査のお仕事で出会った方は、ほぼ寝たきりで意思疎通も難しいかなり高齢の方でしたが、昔から何よりも食べることが好きだったということで
STのリハビリを繰り返して、完全な経管栄養から三食刻み食まで復活されたとのこと。
ただ、繰り返しますが、もちろん個人差はあります。
胃ろうの判断が必要な段階である以上、経口摂取をすることが困難もしくは危険であることは間違いないので、「胃ろうになっても落ち着いたら口からまた食べられるようになる」と断言はできませんし、できない方の方が多いです。
で
も。
医師は最悪の事態を想定して説明することが多いのもありますが、実際に医師からは
「二度と経口摂取は無理です」
と断言されても、希望がなくはないですよ。
経口摂取だけに限らず、各種リハビリ職の「何とかしよう」「よくしよう」「機能向上しよう」の意欲は半端ないって!です。
残存能力に関する判断の確かさは、医師よりもセラピスト軍団(ST,OT,PT)の方が信頼できます。
高齢の要介護者が胃ろうにするデメリットとは
では今度は逆に、デメリットのお話です。
ここでも医療的なデメリットの話はすっ飛ばして、高齢者介護の面のみで考えていきたいと思います。
が。
そうすると、デメリットっていうのは今パッと浮かばないんですよね。
介護する側から言うと、誤嚥の恐れもないから下手に食事介助をするより安心だし、しかるべき指導を受けたヘルパーであれば、訪問介護で経管栄養をすることもできる。
在宅で家族さんが介護をするにしても、管理は簡単で、下手をすると食事をつくったりする手間もないのでその辺も楽。
何かあっても受け入れ先は見つかりやすいし、もしかしたら口からまた食べることもできるかもしれない。
だからこそ、医療従事者も胃ろうを勧めてくるわけです。
デメリットなし!胃ろうバンザイ!
じゃないですよねえ。
そんな簡単なもんじゃないですよねえ。
胃ろうは延命処置にあたるのか
胃ろうは単なる医療行為か、はたまた延命処置か。
これは意見が分かれるところですよね。
この先、多少の回復が見込めて、胃ろうにすることによって生活の質が向上する。
人ばかりではありません。
例えば高齢や寝たきりで、口から食べられなくなって点滴で栄養を取ってきたけれども、点滴だけなら長くは持たないので胃ろうにしましょう、そういった提案があった場合。
それがイコール「このままの状況で寿命を待つか」「それとも胃ろうにして寿命を延ばすか」その判断を強いられる
というケースも少なくないです。
というより、胃ろう造設を迷われている方のほとんどのケースがこれではないでしょうか。
胃に穴をあけて栄養を取ってまで長生きがしたいか。
自然のままの状態で天寿を全うするか。
これは本当に、本人さんとご家族さんの考え方がありますので、一概に他人が決められることでもアドバイスできることでもありません。
本人さんが意思決定できるならともかく、それができない状態であれば、判断するのは家族さんです。
難しいですよね。
ただ、どちらを選んでも間違いではない。
それは言えます。
ちなみにですが、私はここまでえらそうに胃ろうを語ってきました。
介護する側のデメリットはそんなにないと思っていますし、どちらかといえば胃ろう賛成派です。
ですが。
数年前に父親が脳梗塞を発症し、嚥下機能をやられ、
「もしかしたら経口摂取が難しくなるかもしれません。その時は胃ろうになります」
と医師から言われたとき、頭かち割られたようなショックを受けたんです。
どうしようって思いましたよね、こんだけメリット語っといて。
どないやねん、ですわ我ながら。
うちの父親に関しては、幸いリハビリで経口摂取が可能になりましたっていうか、今では日がな一日せんべい食ってます糖尿のくせに。
でも、あのままだったらどうしたのかな。
嚥下機能以外は大きな後遺症もなかったから、胃ろうをしたのかな。
ただ、あの時は何が何でも父親に生きていてほしかったから、胃ろうにしていたかなあとは思いますが、それを本人が良しとしたかはまだわからないです。
そう思うと、ほんと難しい問題ですね。
簡単に決められない問題であるからこそ、ここに書いたことを一つの意見として、参考にしていただければ幸いです。