高齢者の子ども(ここでは息子)が長い間引きこもりで、親が年をとり認知症となり、それまでのように暮らせなくなったとしたら。
そして引きこもりの子どもには発達障害があった場合。
どういった支援の方法があるかの事例です。
これは誤解のないようにお話しておきますが、高齢者の家族が引きこもりであることが問題なわけではありません。
そりゃ、親の年金でご飯食べてるのはどうなんだいとか、働くことができるなら働いたらどうなんだいとか思いますが、それはまあ他人が口出すことではないわけです。
職場定着率90%!発達障害専門の就労移行支援【リンクビー】
Aさんの息子さんも「働きたい」という思いはずっと持っていましたが
どうしていいかわからなったようです。
そういった方のための就労支援サイトがありますので
ぜひご利用してみてくださいね。
ただ、Aさんの事例の場合は息子さんが引きこもりであるがゆえに、様々な問題が起きたこと、
そして時間はかかりましたが、最終的にはきちんと支援の手が差し伸べられるようになったことを知っていただきたいんです。
目次(クリックするとその項目に飛びます)
引きこもりの子どもがいても訪問介護を利用できるか
Aさんの認知症が進んだことで、家は荒れ果て、服は洗濯ができておらず、冷蔵庫は腐った食材だらけ、体重が激減と、取り巻く環境がどんどん悪くなってきました。
ようするに、同居の息子さんには家事能力がなかったんですね。
何かを買わなくてはいけないと総菜は毎日買ってくるのですが、それをお母さんに「はいどうぞ」と提供することができない、薬を食後に手渡すこともなく、掃除もできない。
そして、認知症のお母さんのことが理解できず、Aさんの言うことをすべて鵜呑みにしてしまう。
例えば、Aさんが「今日はデイサービスには行かない」と言えば、休ませてしまう。
家にいても入浴できず食事もとれないので、デイに行ってもらわないといけないのに、それを何度説明しても理解できません。
お母さんが体調が悪くて寝込んでいても、誰に連絡していいかわからない。
夏でも暖房をつけ、フリースを着るAさんを止められない。
この頃、正直私は発達障害に対する理解が薄く
どうしてこんなことができないんだろう
食後に薬を渡すぐらいできないのか
ご飯くらい配膳できないのか
そう思ってしまっていました。
でもできないものはできないんですよね。
今思えば、息子さんにいろいろな要望を出したけれども、それもしんどかったろうなと反省しています。
とはいえ私はAさんのケアマネです。
Aさんの生活を守らなくてはいけない。
そこで考えるのはもちろん、訪問介護の導入です。
Aさんは家事能力は全くなくなったけれども、食事やトイレの動作は介助なくできますし、入浴はデイサービスで済ませます。
なので必要なことは家事。生活援助のサービスです。
しかしながらこの生活援助、同居家族がいる場合の導入は簡単にできないんですね。
元気な同居家族がいるならその人が家事をすればいいでしょそうでしょってことです。
それはもちろんそうなんですよね、保険を使ってのサービスなんですから。
家族がいても、高齢者であるとか体調がすぐれないとか病気とか、それこそ仕事が忙しくて昼間独居とかだと、利用することは可能なんですが、Aさんの息子は若いし元気やし家に常にいるし。
くわしくは☞「訪問介護のこと② 同居家族がいても生活援助が導入できる場合」
この段階では、息子さんに何の確定診断もついていなかったですし。
とはいえとても放置できる状況ではありません。
保険者である市町村に相談しましたが
「無理です家事はその息子にさせてください元気で家にいるんでしょ」と却下けんもほろろ必死の説明華麗にスルー
この時は結局無理やり身体介護のサービスに変更して対応しましたが、一番大変だったのが、やはりこの生活援助が入れない問題でした。
身体介護と単位が全然違うので、必要な回数の訪問介護が利用できなかったんです。
身体介護にすると単位が高いので、デイの数を増やしたら
限度額いっぱいいっぱいになってしまいました。
就職活動はプロと一緒に。
発達障害専門の研修×障害者の転職サポート実績業界No.1 atGPとの連携で職場定着率90%!
発達障害専門の就労移行支援サービス【リンクビー】
引きこもりの息子さんの相談は保健所に
その後家庭環境が悪くなる一方のAさん。
何より問題はご飯を食べていないせいか、どんどん痩せていくこと。
この頃には私もかなり奔走しており、地域包括支援センターに何度も相談していました。
はじめは高齢者虐待の、ネグレクト案件で相談を持ちかけたのですが、相談を重ねるうち
息子さんにもしかるべき支援が必要であると判断されました。
ただ、私も地域包括支援センターも高齢者介護のプロではありますが、障害に関しては詳しくありません。
地域包括が地域の引きこもり支援団体を探し、支援団体から保健所に話が行き、病院につながることができ、息子さんにもヘルパーや看護師が入るようになり…
ここに至るまでに何年もかかりました。
今もまだ息子さんは自分の障害を受け入れていませんが、結局認知症の進行からAさんが施設入居することになり、経済的な事情から、息子さん自身は障害年金を申請することを渋々了承されました。
その後は私はAさんのお宅に行くことはなくなったので、息子さんには会っていません。
施設への面会も全く行かれていないようです。
ただ、この間道で見かけたときは元気そうにされていたので、もしかしたら肩の荷を下ろしてほっとされてるのかな?とも思います。
そうだといいな、心底そう願っています。
引きこもりの子どもと高齢者の世帯はたくさんある
はじめに前編で述べましたように、今うちのケアマネは全員この「同居家族が引きこもり」ケースの担当をしています。
全員本来であれば働き盛りの息子さんです。
そして共通しているのは、その息子さんたちはみんな、何の診断も受けていない。
でもおそらく何らかのコミュニケーション的なしんどさがあるんだろうなという感じです。
今の時代であれば、小さい時に何らかの支援を受け、親子ともども療育を受けたんでしょうが、そういった機会もなく育ってしまって、社会でしんどい思いをして引きこもってしまう。
本人たちもつらかったでしょうし、親御さんもつらかったでしょう。
でも、親はいつか年を取る。
順番で行けば、先に亡くなってしまう。
その後の人生をどうするのか。
実は、保健所や障害福祉課の職員とAさんの息子さんの件で関わった時、やはり今の高齢者の子供世代の引きこもりや発達障害問題を、かなり危惧していました。
高齢者の子供が引きこもりである問題は、決して特別なことではありません。
恥ずかしいことでもないし、誰も助けてくれないわけでもない。
だって誰も悪くないんです、時代がそうだったんですから。
だから身近にそういった方がいれば、まずは地域包括支援センターもしくは保健所に相談をしてくださいね。
障がい者の転職サポート実績業界No.1のatGPと連携!発達障害専門【リンクビー】
まずは相談、見学から。
自分にあった仕事を見つけてもらいましょう。