若年性認知症は他人事ではありません。
おそらく、介護業界で働いている人間が、
「自分がかかったらどうしよう」
と、恐れている病気のうちのひとつだと思います。
ここでは医療的な観点の話ではなく、あくまで介護保険の側から
若年性認知症はどういうものなのか、かかってしまったらどうすればいいのか
考えていきますので、もしもの時に慌てなくていいように、少し頭の片隅に入れておいてくださいね。
目次(クリックするとその項目に飛びます)
そもそも若年性認知症とは
医療面から難しく説明するつもりはないので、そこを知りたければ他のサイトをググってくださいとして
簡単にだけ若年性認知症をご説明します。
若年性認知症は、64歳以下で発症する認知症のことを指します。
有名なのは、脳の萎縮が原因の「アルツハイマー型認知症」ですが、もちろん種類はこれだけではありません。
脳卒中の後遺症として発症する「脳血管性認知症」の他、ピック病やレビー小体型認知症など、いくつかの原因があります。
脳血管性認知症の場合は、高次脳機能障害となる区別がつきにくいことはあるのですが、比較的原因がはっきりしていて、認知症になるきっかけがわかりやすいので、発見に苦労することはそうありません。
ただし、他の認知症の場合、とにかく発見しにくいことがこの病気の難しいところであると思います。
多少物忘れが増えたり、行動におかしなところがあったところで、若い方であれば、本人も家族も、まさか認知症であるとは考えません。
認知症は立派な(という言い方は違うかもしれないけど)脳の病気です。
この点に関してはずいぶん世間でも周知されるようになりましたが、今でも「高齢になったらぼける」といったような、加齢によって認知症になるという間違った考えを持っている方は多いです。
ちなみにですが私の経験を踏まえると、80歳過ぎて急に重度の認知症になったりすることはそうないように思います。
他の疾患が原因で判断能力等が鈍ることはありますが、純粋に認知症だけがひどくなるケースは、超高齢になってからはそうないですね。
逆に言うと、若いうちに発症した認知症は重度化しやすいです。
それはやはり、初期の対応が難しい点も大きな原因ではないでしょうか。
認知症による弊害が出ても気づかず、精神的な病気を疑う方も多いですし、単に仕事ができない、家事ができない人と判断され、自信を喪失して鬱状態になる方もいます。
私の周りの若年性認知症の方で、一番若い方は40歳で発症しています。
60歳前後の発症の方も多いですが、その年でも、まさか自分が家族が認知症とは夢にも思いませんので、大きな症状が現れるまで気づかないことがほとんどです。
今は精神科クリニックでも認知症に詳しいところが増えてきていますので、そういったところでもっと早期発見ができればいいなと思います。
家族が認知症かなと思ったときの対応はこちら
若年性認知症と介護保険サービス
さて、何らかの症状が現れ、若年性認知症の診断が下った場合、介護保険の二号保険者として介護サービスを利用することができます。
ただ、ここで実際何のサービスを利用するかというのが問題です。
脳血管性認知症で何らかの脳卒中の後遺症として若年性認知症を発症した方は、もしかしたらお体に何らかの不自由な点が残っているかもしれません。
しかしながら、若年性アルツハイマー型認知症などの場合は、多くが体は若くて元気な状態です。
比較的症状が進行しても、身の回りの動作は自分でできる方が多く、そうすると介護サービスを受けることに自分も家族も抵抗があることが多いです。
特に若くして発症した場合は、まだ子供さんが学生の場合もありますし、そうでなくても年金の受給がまだだったり、金銭的にも介護サービス利用が難しいことも。
若年性であるなし関わらず、認知症であればデイサービスの利用をぜひして頂きたいのが専門職からの意見。
医師も多くがデイサービス利用を勧めます。
刺激を受けることで進行を遅らせることもできますし、デイサービスを利用している間は家族が仕事をしたり、介護負担を軽減することもできます。
ただしここで浮上するのが
若いのに年寄りのデイサービスなんか行きたくない問題。
これはねえ、すっごい多い。
若年性認知症に関わらず多い。
なんなら、もういいじゃんあなたもなかなかのお年じゃん的な方も言う。
「年寄りばっかりのところでお遊戯なんかできるかてやんでえ」
でもね、実際は今のデイサービスのエンターテイメントさはすごいですから。
とはいえやはり極端にお若い方は、正直居心地は良くないと思います。
本当に正直なこと言いますと、お年寄り間のマウンティングはなかなかなかなかなので、下手なデイに行くと若者は浮きます。
そこをうまく対応してくれるデイサービスをケアマネに探してもらいましょう。
その他として、若年性認知症の方で一番大ごとになるのが、徘徊や外出先から帰ってこれなくなること。
ものすごく多いです。
若いからどこまでも行けますし、若い方が歩いていても周りの人もまさか徘徊とは想像もしませんから、なかなか発見できません。
一人で外に出てしまう方の場合は、徘徊探知機の利用も検討した方がいいでしょう。
以上、簡単に若年性認知症についてまとめてみました。
確かに若くして認知症になった方は、重度まで進行することが少なくありません。
しかしながら、それは発見が遅れたり、初期の対応が遅れたりした場合の話。
あとは、若くして認知症になっても、フォローを受けながら就労できたり、地域でいつまでも暮らせるように、世間の理解がもっと広まることを切に願います。