ケアマネ日記

ケアマネから見た8050問題 大人の引きこもり実際の事例と本当に困ったこと

8050問題という言葉をご存知でしょうか?

80代の高齢者が、50代の引きこもりの子どもと暮らしていることを表す言葉です。

 

もちろん、80代の親と50代の子どもが一緒に暮らすことに関しては何も問題ありません。

問題なのは、この50代の子どもが引きこもりであるということ。

そしてその多くの子どもが、経済的にも、その他の様々な社会的、物理的なことも、高齢の親の世話になっているということ。

 

このあたりの問題に関してはこちらの記事にも書いています。

 

長期化する引きこもりの末に親が高齢となり、その親の年金で生活をしていることや、親が亡くなった後の生活をどうするかという点にフォーカスされることが多いこの8050問題。

ですが、実際に私がケアマネとしてこの8050問題のケースと関わった時、困ったなあと思うことは、実はもっと違うところにありました。

 

大人の引きこもりで困ることあれこれ

一言に8050問題といっても、もちろんいろんなケースがあります。

 

引きこもりの子供と暮らす高齢者前編 息子に大人の発達障がいが見つかる」

のケースの場合は、子どもさんは発達面、知的面の障がいに気づかないまま成長し、高校まで卒業をされました。

その後すぐに働いた先でうまくいかず、そこから約20年無職。

全く外に出ないわけではなかったし買い物等は行っていましたが、基本無職で、母親のお金で生活をしていました。

 

「親の年金で暮らしていた引きこもりの男性 両親が亡くなったあとのお話」

こちらのケースの場合は、40歳手前まではお仕事をされていましたが、体を壊しその後無職。

引きこもりとはいいながらこの方も外出はされていたので、単純に無職。

ふう
ふう
単純に無職ってのも変だけども

 

そう、私は「引きこもり=家から出ない」人ばかりだと思っていたのですが、実はそうじゃない。

 

他のケアマネが担当しているケースでも、この8050問題に当てはまる利用者さんが数人いるのですが、全く家から出ない人は、うちの事業所の場合は一人もいません。

大なり小なり外には出ています。

働いた長さにちがいはあれど、就労経験がある人も多い。

でも共通しているのは今現在は無職。全員ここ十年以上無職。

そして全く収入がない。

もしかしたらしかるべき病院にかかって手帳等を申請して、障害年金がもらえるんじゃないかと思う人も、手続きをしていない。

 

社会問題としての8050問題はこの収入面が最重要課題なんでしょうが、ケアマネの立場から見ると少し問題点が違ってきます。

私たちが感じるのは、親の側、利用者さんの生活面での不安定さなんです。




家事ができない

いろいろなケースがあるので一概には言えないし、あくまでも私と同じ事業所のケアマネが経験したケースをもとにお話をしていきますが、8050問題の家庭の場合、家事のほとんどを親御さんがしていることが多いように思います。

なぜか買い物は行ける子どもさんは多いんですが、基本的な食事や洗濯、掃除は、親がしている。

で、私たちの仕事はその親御さんが家事できなくなってからが出番ですから、同居している子どもがいるはずなのに荒れた家を見て

ふう
ふう
えっとひきこもってなんぼでも時間があるなら家事なさってはいかがか

子どもさんに言いたくなっちゃうんです。

ちなみにそういった場合にヘルパーの支援が受けられるかについてはこちら。

訪問介護を詳しく説明② 同居家族がいても生活援助が利用できる場合

100%無理ではないけど簡単にOKも出ません。

そして原則利用者さん本人の家事しかできません。

家事のできない同居人である子どもさんがいると、その線引きが非常に難しい。




判断能力がない

判断能力がないというかうーーん。

一般的な大人であれば、親がいつか歳を取り、それこそ働けなくなり、要介護状態になることをある程度覚悟し、そして

そうなったらどうしようかなあ

大なり小なりは考えると思うんですよ。

 

8050問題の場合、それを想定していないというか、全く考えていない人が非常に多い印象です。

 

そういうことを想像もしたくないのかな?親が年を取って環境が変われば、自分の状況も変わるからかな?と思っていたんですが、どうもそうじゃない。

親が自分が年を取るわけがない

今の(親の加護のもと引きこもっている)状態が終わるわけがない

心底そう思っている人が多くて、それに私はとても驚きました。

ふう
ふう
そんなわけないやんか…( ゚Д゚)

 

別に今の状態がいつまでも続くと信じて頂く分には、個人の自由なので一向にかまわないのですが、困るのが介護サービス等を決めてもらうとき。

なかなかね、親御さんの現実を受け入れてくれないんですよ。

もう家事とか身の回りのこととかできなくなっているのに

やればできるでしょ

とかね、親の認知症を認めないのもそうですね。

 

世間的には引きこもりであろうがなかろうが、同居の子どもさんっていうのは、

親の面倒をみるもの

少なくともキーパーソンとして指揮を取るもの

としてみられますので、そこできちんとした判断ができない、現実を受け入れようとしないというのは地味に困ります。

派手に困ることもあります。←




コミュニケーションが取れない

これ、意外と全員そうかと思わせといてそうでもないです。

ふう
ふう
どっちやねん

長年引きこもっている人は、他人と話をするのがイヤなんだろうなと思ってたら、一概にそうとも限らない。

むしろ、家族以外に話し相手ができて、嬉々としてお話してくださる方もいます。

でも。

なかなか心を開いてくれない人もやはりいますし、医療職と関わるのはイヤとか、事業所と話をするのは拒否とか、ある特定の人(職種)に対して心を閉ざされる方もいます。

ケアマネは何をやってる人かよくわからないので(ここ泣くとこ)、わりとすんなり受け入れられることが多いかも。

 

そしていったん敵認定されると、もう何をしても拒否されたり。

ふう
ふう
気を付けよう(心から)




暴力をふるう

これねえ…。

実は少なくないんですよね…。

大っぴらに暴れるとかはなくても、手を出していたりとか、証拠はないけど子どもに親御さんが怯えているとか、異常に顔色を窺っているとか。

 

高齢者虐待のケースとして、地域包括支援センターや役所が動いている事例もあります。

 

長年親に暴力を振るってきたというパターンよりも、前述したように、老化に伴う親の心身の変化が理解できず、イラついて暴言や暴力に至ることが多いように感じます。

特に引きこもりだと、親と一緒に生活する時間が長いので余計にイラつくんでしょうね。

ふう
ふう
そしたら自分が外に出て働いたらええやないかと思うけど言えない(たまに言うけど)

 

他人が家に来るのを拒否する

これも多い。これも困る。とても困る。たいそう困る。

ふう
ふう
困る

 

自分の縄張りに人が入ってくるのがイヤなんだろうなって人もいるし、単純に

うちの親にヘルパーとかそんなんいらん

という人もいるし、どっちにしても困る。

必要だからヘルパーなりなんなりのサービスを導入しようとしているわけで、嫌がられても困る。

 

でも実際

「子どもが嫌がってるから、サービスもういいです」

って言われることもあって、そういう時はほんとに困るって何回困るいうねん。

 

この、子どもが嫌がるからサービス拒否っていうのがけっこうあるのですよ。

家に来るのももちろん、デイサービス行かせるのも嫌がられたり。

配食弁当勝手に断られたこともある。おいしくないとか味が薄いとか言って。

ふう
ふう
じゃあ作んなさいよあなたが作んなさいよ

と思うけど作らないそして生活は乱れていくという。

同居の子どもさんの意見を無視してサービスを勧めるわけにもいかないし、悩ましいところです。




8050問題の利用者に対してケアマネがどうすべきか

どうすべきかという問いに対しては、答えは一つ。

専門機関に相談すること。

 

ケアマネもそうですが、利用者さんを取り巻く介護サービス事業所の多くは、医療職か介護職。

私らはあくまでも利用者さんのために動く職種ですから当然です。

たいして、引きこもりの対応のプロは、精神保健福祉士や保健師、引きこもりの会など。

勉強してきたことが全く違うんです。

 

私がいくつかの8050問題の利用者さん家族と関わって思ったこと。

ふう
ふう
餅は餅屋。プロはすごい

 

引きこもりの子どもに対して、どう接していいかわからない私と違い、保健師さんや精神病院の関係者、引きこもりの就労支援の人の対応は本当にお見事でした。

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一度ご相談だけでもしてみては?

 

その代わり、高齢者のことに関しては、私の方が知識があります(キッパリ)。

 

私は介護保険の利用者さんを支え、子どもさんに関してはしかるべき機関に紹介し、そちらに対応を任せる。

これが一番得策だと思います。

そしてお互いに情報を交換し、連携する。

介護保険が大好きな言葉「多職種連携」です。

 

専門機関がわからない場合は、まずは地域包括支援センターに相談するか、保健所に相談しましょう。

精神病院のPSW(精神保健福祉士)に相談したこともあります。

NPO法人の引きこもりの会にお世話になったこともあるし、役所に相談してもいいと思います。

 

とにかく家族支援もケアマネの仕事とはいえ、専門家のフォローが必要な引きこもりの人までは抱えきれませんし、するべきではない。

そもそもの担当が違います。




家族が8050問題で悩んでいたら

自分が引きこもりの子どもの兄弟であったり、何らかのお身内である場合。

このポジションの人ね、なかなかSOS出さないんですよね。

 

多分なんですけど、少し恥ずかしいと思ってしまったりとか、あまり実情を知られたくなかったりとか、人に頼りたくなかったりとか。

8050問題の当事者以外の家族さんは、すごく我慢強いというか、助けを求めることを良しとしない人が多くて

ふう
ふう
何か困ってることないですか?

て聞いても

大丈夫です

みたいなね。

大丈夫なわけないんですけどね。

 

一人で抱え込むには問題が大きすぎますし、時が流れて親御さんが要介護状態になった場合は、80サイドも50サイドも、離れて暮らす家族も困ってしまうことが多いので

親御さんの判断能力のあるうちに、専門機関に相談しましょう。

 

せめて8050よりも前、5020くらいで相談し、解決方法を探ることができればベストかなと思います。

 

8050問題まとめ

つらつら書いてきたように、この問題は単に

「若いやつが働きもせず親のすねをかじって許されん!」

と憤慨するだけの話ではありません。

たとえお金に余裕があっても、生活に支障が出る問題なんです。

 

だからといって子どもサイドを責めても仕方がないし、もちろん

「親の育て方が悪い!」

という問題でもないです。

複雑な理由や事情が重なって、結果8050になってしまったかもしれない。

 

みんなにとってより良い方向に行くように、ぜひ専門機関の利用と、周囲の理解をお願いしたいなと思います。

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