生活保護。
この制度には賛否両論ありますが、セーフティーネットとして、とても大切な制度だと個人的に思っています。
利用者さんを生活保護につなげたこともあるし、生活保護だから道を踏み外さず生き延びることができた人もたくさん見ていました。

が。
全然否定はしないし、必要な制度だとは思うんだけど
と思うこともなくなくはない。
なくなくなくなくない。
私はケアマネとして介護計画(ケアプラン)を立てるのが仕事なので、利用者さんや家族さんの年収を聞いたり、月にいくら介護費用を出せるかも確認しなくてはいけません。
そしてお金が足りなくて、必要なサービスを削ることもあります。
そういう作業がいらないのが、生活保護を受給している利用者さん。
自己負担がないから、わりと好き放題サービスを導入できるんですよ。
今回は、そんな「生活保護と介護保険」の関係にスポットを当てお話していきます。
ダークな裏話も飛び出すかもしれないし飛び出さないかもしれないし、飛び出すかもしれないし多分飛び出す。
目次(クリックするとその項目に飛びます)
生活保護 介護保険サービス自己負担分は支払わなくていい
生活保護制度の趣旨はこちら。
生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。 (厚生労働省サイトより抜粋)

志は良し。
だからといって、介護保険サービスも医療も、保険適応自己負担分は払わなくていいってのはどうかと思う。
そう。
生活保護になると、介護保険サービスは、食事などの自費部分以外の支払いは発生しないのです。
病院もそう。
健康で文化的な最低限度の生活よりも上だと思うんですけどこの待遇。
ようするに普通の人なら、負担割合証に応じて、介護サービスを利用したら、1割2割3割の自己負担が発生するのですが、それがゼロ。
払わない。
払わなくていい。
生活保護のうちの、介護扶助と呼ばれるものに該当し、払わなくていいようになっています。
介護保険の財政が足りないと騒ぎ、サービスの利用を締め付け、今まで一生懸命働いてきた富裕層からは2割3割取るのに、生活保護だと負担なし。
私はほんと公的扶助には否定的ではないのですが、やっぱりこの部分はもやる。
医療費もそうだけど、自営業とかで働いてきて国民年金だけで暮らしている人に比べての、その優雅さに非常にもやる。
生活保護者から1%でも徴収したら、財源かなり変わると思うのに。
そして払えないような額もらってるわけじゃないのに。
これは生活保護受給者が悪いわけでは決してなくて、国が悪いんですけどね。
生活保護者のサービスは断ります、という事業所もあるみたいですが、私の周りでは聞いたことがありません。
むしろ生活保護歓迎の方が多いかも。
その理由はもちろん、自己負担分の支払いがないから。
デイサービスとか食事代がいるところは別ですけど、基本本人の介護保険自己負担がないから、じゃあじゃんじゃんサービス使いましょって来る事業所もあるとかないとか。
生活保護者のケアプランの作成方法
さて、ケアプランを作成しないと介護保険サービスは使えません。
いくら自己負担分を払わなくてもいいとはいえ、ケアプランがないと介護保険サービスは使えないのです。
そこで登場するのはケアマネージャーさんつまり私だよ。

生活保護の利用を嫌がるサービス事業所は少ないですけど、嫌がるケアマネは多いかもしれない(小声)。
なぜなら手間暇かかるから(小声)。
私は今七人担当してますけど(多)。
ケアプランに生活保護のケースワーカーが介入する
基本的にはケアプランというものは、利用者さんとケアマネと事業所さんがあーだこーだいうて考えて作成すればいいんですけど、ここに生活保護課のケースワーカーが入ってくることがある。
そのサービス必要ですか的な。
もっと削れませんか的な。
うちの地域はそうでもないんですけど、ケアプランを決めるサービス担当者会議にケースワーカーを呼ばなくてはいけない地域もあるし、そうじゃなくても福祉用具とかは
とかはザラに言われる。
とかね。
こっちも勉強して資格取ったプロなので、プランにいちゃもん付けられたら腹立つことありますけど、お上があかんというたらもうあかんのです。
で、お上があかん言うてましたわと利用者さんや事業所さんに説明するのはケアマネの役目。
それは困る、もう一回頼んできてと言われて、再度お上に直訴するのもケアマネの役目何この無限ループ。
そんなループがなくても、ケアプランが変わるたびに急いで書類を作成し、役所に提出しないと「介護券」が発行されません。
これがないと事業所さんが請求できないのです。
超絶荷が重い。
たまにケアプラン役所にちゃんと出したのに役所が介護券忘れてて、事業所に
と責められることもある。いや、たまにじゃない。
こんな感じで一事が万事役所とやりあわないといけないので、手間も気苦労も増えます。
みなし二号は非常にややこしい
みなし二号とは、二号保険者(40歳以上64歳未満)で生活保護の方を指します。
めっちゃくっちゃ大変です!!
みなし二号がそれだけ大変かを説明しだすと10,000字を越え、そのうち9,500字は愚痴になるのでやめときますが、大変です。
そして多分、ケアマネ以外はその意味が分からないと思うので割愛。
しかもみなし二号の人は障がいの保険を使っている人も少なくなくて、その場合は、生活保護課、障害福祉課、ケアマネの三つ巴の戦いになります。
ここではそんだけしか書かない。
生活保護で施設に入ることができるか

さてでは、生活保護と介護保険のだいたいの関係をわかってもらえた(と決めつけた)ところで、本題です。
生活保護でも施設に入れるかどうかの話。
ちょっぴしダークな話も混じってきます先いうときます。
生活保護で公的介護施設に入所する場合
ここでいう公的介護施設は、特別養護老人ホーム(特養)、老人保健施設(老健)を指します。
で、どちらの施設も負担限度額認定証が適用されますし、生活保護の場合はほとんどが一番安い第一段階になるので、費用的にそう高くならない。
が。
生活保護だと
大部屋利用してください
といわれることが非常に多いのですよ。
これ生活保護激アマ地区のうちんとこでも言われるから、ほとんどがそうなのではあるまいか。
ところが今の特養や老健の主流は「ユニット型」なので、基本的にお部屋は個室になるわけです。
そうなるともちろん大部屋よりもお金は高くなり、生活保護では利用ができないか、もしくは受給する保護費より高くなるか。
だからといって、従来型の多床室(大部屋)のある特養はそう多くないし、生活保護じゃなくても安い部屋がいい人もたくさんいるので、なかなか空きが出ません。
となると、急ぎで施設に入りたい時の方法はお次しかないのです。
生活保護でも入ることができる有料老人ホームがある
あります。
有料老人ホームの探し方は同じ。
今はもう有料老人ホームは専門業者に頼む時代。
で、担当者に
と依頼すればOK。
ここまでは生活保護だろうがそうでなかろうが同じなんだけど、ここからが違う。
まず、生活保護だと介護付き有料老人ホームを紹介されることはほとんどありません。
料金設定が厳しいことが多いのです。
なので、紹介してもらう先は、ほぼ「住宅型」有料老人ホームかサービス付き高齢者向け住宅。
これは、素人さんには施設に見えますが、介護保険的には「在宅」サービス、つまり、見守り等のある建物のお部屋を借りて、そこで生活するための介護保険サービスを受けるというもの。
この手の在宅型の施設には、生活保護を積極的に受け入れていこうというスタンスのところが少なからずあります。
家賃をその地域の生活保護の上限ギリギリに合わせ←
介護保険の限度額ギリギリまで、系列(主に同一建物内の訪問介護・訪問看護)のサービスを利用し←
そしてうまいことお小遣い5000円くらい余る料金設定になっている←
それは良い、それは良いのです。需要と供給がうまくいっているからいいのです。
限度額パンパン使うことを前提にサービスを組まれてもいいのです。
パンパンにサービスが入っているのに、全く予定が変わらず、組んだ通りのサービスに入りましたよという実績が来てもいいのです。
系列外のサービスやデイサービスに行くのは最低限にしてくれと言われてもいいのです。
いいのですが。
こういう施設で、生活保護の方の入居に対して、よく言われるのがコチラ
「要介護3以上の人なら入居受け付けます」
これが困るんじゃ!!
まああれですよこの理由といたしましては、例えば要介護1だと限度額がだいたい16000単位なので、マックス使って16万ちょい。
対する要介護3だと、限度額が27000単位弱なので、マックス使って27万弱。
これが例えば系列の訪問介護なんかで使える額の限度なので、もしサービスが訪問介護だけなら、マックス使えば売り上げがこの額なんですよ。
てことなんですよ。
なんです。
生活保護と聞いたら途端に介護度あげてもらわないととか区分変更してもらわないととか言われるので、そのあたりはまああれなんですけども、まあ選ばなければ生活保護でも施設に入れます。
ものすご選べるかと聞かれたらそれはまああれですけど、入れます。
生活保護だと有料老人ホームは難しいと思われることがあるので、そこは安心してください。
生活保護と介護保険のまとめ

ではまとめましょう。
・生活保護だと介護保険の自己負担分は支払いなし
・デイサービスや施設の食費等の自費は支払いあり
・生活保護のケアマネはケアプラン作るのは大変
・お高い福祉用具のレンタルや購入は待ったがかかることもある
・みなし二号はややこしい
・公的介護施設は従来型の多床室でないと利用しにくい
・生活保護でも入れる有料老人ホームはある
・要介護3以上だとわりとすぐ見つかる
こんなもんでしょうか。
再度繰り返しますけれども、私は生活保護は否定しません。
不正受給やなんやばかりが取りざたされますけれども、もしこの制度がなかったら、世の中はもっと荒れていると思います。
それでも、医療費や介護費、その他もろもろの優遇があるがゆえに
という声が上がるのも、致し方ないとは思います。
多分、生活保護の人が受けている保障や優遇を、一般の人も受けられるようにしたら、そんな声は出ないんですよね。
生活保護を引きずり下ろすんじゃなくて、その他の人の支援を底上げする。
そんなんしてたら財源いくらあっても足りないですけども。
ということで、ちょっと裏話も含んだ「生活保護と介護保険」のお話でした☆
老人ホーム検索サイト「みんなの介護」でも、生活保護と介護保険サービスについて書いています☆